「中国百科 歴史編」第6章 隋唐時代

第6章 古代~唐代 隋唐時代

 隋唐時代
 陳瞬臣氏はその著書「中国五千年史(下)」の中で、以下のように述べています。
「隋は秦と似たところがあるようです。両王朝の中国統一のあいだには、約八百十年の間隔があり、諸条件も異なっています。・・秦の始皇帝が、商おうの政治改革以来の成果の上に立って、天下を統一したのに対して、隋の文帝も北朝の政治的業績の上に立ったといえるでしょう。北魏太祖 ( 道武帝拓政珪 ) による部落首長制から郡県制への切りかえ、三長制、均田法による政治改革、孝文帝による洛陽遷都、漢化文明主義、諸族通婚奨励による人種的偏見の解消などが、大きな力をうんでいました。(中略)隋の文帝は、これら北朝諸政権の遺産を継承することによって、中国の統一をはたしたといえるようです。(赤字は筆者)」

    『ローマは一日にしてならず』の諺どおり、隋もその成立までには、諸王朝の農業育成策などの成果の蓄積が必要であったわけである。更に秦朝に始まる運河や治水工事のおかげで中国の農業生産は大きく発展した。中でも隋時代のあの暴君といわれる炀帝が開いた大運河は中国の北部と江南地方を結びつけるという大きな役割を果たし、隋自体はその為に滅びるがその成果は唐時代に引き継がれる。
 かくして唐にいたると「貞観の治」と呼ばれる善政が実現するが、この全盛を可能ならしむる背景には、当然のことながら、運河の恩恵に授かった商業の発展と農業の発展があったといわねばならない。
 581 年に隋の文帝 (楊堅) が南朝の陳を併合したことで中国は再統一された。第 2 代皇帝の炀帝は、南北朝時代に開発の進んだ江南と華北と結びつける交通幹線として大運河を削掘し、朝鮮半島へ領土を求めて高句麗を攻撃したが、農民へ過重な負担を強いたこれらの政策によって反乱の中で滅亡した。
彼は後の世には暴君として伝えられている。確かに一面では暴君であったろう、しかし物事には2面性がある。
 彼があの大運河を掘り進めたのは、歴史的必然性であるし、彼の偉大な功績といわねばならないだろう。
 また、その動機といえば、「彼は北の北朝の人間だった。そして彼は南朝の文化に憧れた。」という意外と単純なものだったのかもしれない。
 
中華世界の拡大
 隋の炀帝は高句麗を攻めて失敗し、隋の滅亡を早めることとなった。
 時代を下って、唐は高宗の代には積極的に拡張策をとり、北は突厥を服属させ、東は朝鮮半島を制圧し、西ははるか西域都市を服従させ広大な領土を支配した。征服地には都護府を置き、実際の統治はその地の有力者に任せた (羁縻政策 ) 。
 唐は、国際性ある文化を作り上げ、東アジア文化圏は唐を中心に強いまとまりを見せた。東方の朝鮮や日本は、朝貢制度を通じて統治制度や仏教文化などを導入し、それなりの文化を発展させた。
 高句麗の滅亡後、中国東北地方に建国した勃海や、7 世紀初頭にソンツェンガンポが諸部族主が統一して吐蕃を建国したチベットでも、唐の制度や仏教文化などが普及した。

人的支配から土地支配ヘ
    隋は南北朝時代の諸王朝で試みられた制度を取り入れ、均田制・租庸 調制・府兵制により財政・軍事の基礎を固めようとした。この三位一体 の制度は唐に受け継がれた。これらの制度は戸口調査によって民衆を個人単位で把握し、個々人に税負担を課すことで成り立っていた。
     しかし、 8 世紀に入ると没落して逃亡する農民が増え、均田制も崩れ、租庸 調制・府兵制もそれに伴い崩壊した。府兵制の代わりに傭兵を用いる募兵制が採用され、財政再建のため、個人単位ではなく、現実に所有している土地に応じて夏・秋 2 回の 税を課することとした。このような中央による個別人身支配の崩壊は、地方で直接、軍事と民政の双方を握る節度使の権力を増大させた。朝廷が直接支配する形は崩れることとなる。

流通の拡大と地方分権
     隋の炀帝が作った大運河は、中国の南北の流通状況を画期的に改善した。また唐王朝の周辺諸国への影響力の拡大により、中国内陸部や周辺諸国の商業の発展をもたらした。唐は塩・鉄などを専売とし、その利益を一手に収め、国家の財源に充てようとした。同時にそれは民衆の不満を煽り、密売を増やす結果となり、最終的に塩密売人の徒党集団の黄巣の反乱へと結びついていく。
     唐王朝は儒学の試験によって広人材を求め科挙の制度を隋から引き継ぎ中央集権化を図った。しかし、商業の活発化は地方に割拠する節度使 ( 藩鎮 ) の財政基盤を強化することとなり、地方の自立を促すこととなったが、唐の朝廷の力を弱める二律背反となった。
     唐滅亡後の五代十国時代には、このような唐末の藩鎮から群雄となった例が数多く見られる、群雄割拠の時代が再び到来することとなった。
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